2026.5.11

広報コラム

AIリリース作成の現在地:広報の現場でどう使われているのか

近年、あらゆるビジネスシーンで生成AIの活用が叫ばれています。広報・PRの現場も例外ではなく、プレスリリースの作成にAIを取り入れる企業が増えてきています。しかし、その一方で「思った通りの品質にならない」「情報漏洩が怖い」といった壁に直面し、活用を断念してしまうケースも少なくありません。

本コラムでは、アンケート結果や企業事例を交え、AIによるリリース作成の「現在地」と、生成AI時代に広報担当者がなすべき事について紐解いていきます。

※本記事は2026年4月上旬に開催したウェビナーの内容を再編集したものです。内容は開催当時の情報になります。また、弊社独自の見解が含まれるため、他社と見解が分かれる可能性があります。

登壇者

桃井 克典(もものい かつのり)
プラップノード株式会社 コンテンツマネージャー

2013年プラップジャパン入社。PRコンサルタントとして、BtoC・BtoB問わず様々な企業・自治体の広報業務に従事。リリース配信、メディアアプローチにとどまらず、イベント、SNS、動画、Webサイトなど様々な手法を通じた戦略立案・実行を担当。2020年よりPRオートメーションのマーケティング担当として、Webサイト、ウェビナー等で広報活動効率化のヒントを発信している。

生成AIに期待する業務の変化:全体から「部分」へ

弊社が実施した調査によると、2024年には「情報収集」や「アイデア出し」に次いで「リリース作成」をAIに任せたいという期待が高まっていました。しかし、2025年になるとその傾向に変化が現れます。リリース作成の順位は一歩下がり、代わりに「校正・翻訳」や「メールや議事録作成」といった、すべてをAIに任せるというよりも、具体的かつ部分的な作業への期待が上昇しました 。

このシフトは、多くの広報担当者が「AIにすべてを任せる」ことの難しさを実感し始めた結果と言えるでしょう。思っていたような内容が出力されないという「品質問題」や、重要情報の入力が不安という「情報漏洩」「社内ルール問題」がその原因にあるようです。

先進企業はどう活用しているのか?

AI活用に成功している企業は、AIを単なる「執筆代行」としてではなく、戦略的なパートナーとして位置づけています。

1. 仮想チームによる自動化(チューリング社)

広報担当者が1人でありながら、32人のAIエージェントによる仮想PRチームを構築した事例です。事業計画を入力すると、AIチームが自動で議論し、リリースの叩き台やメディアリストをアウトプットする仕組みを整えているということです。特筆すべきは、広報ノウハウを徹底的に言語化し、マニュアルとしてAIに読み込ませている点です。空いた時間は人間にしかできないメディアアプローチに当てることで、1人広報の限界を超えた業務量をこなしています。

2. 「効率化したこと」自体をネタにする(JAPAN AI社)

自社ツールを用いてリリース作成時間を約80%削減したという同社は、その成功ノウハウをnoteやオウンドメディアで公開しています。時間のかかるリリースの初稿をAIで高速化し、そのノウハウをAI検索されやすい媒体に掲載。AIによって効率化を実現するだけでなく、その取り組み自体を「先進的な事例」として発信し、広報ネタとして昇華しているのです。

その他にも、セキュアな環境で過去リリースを学習させた後に企画書を入れてリリースを書いてもらっているという企業や、リリースを作った後に誤字脱字、曜日間違いのチェックなどをAIに任せている企業、検索されやすいリリースになっているかどうかをAIに聞いている企業などもありました。

米スタンフォード大学によると、企業のリリースの24%がすでに生成AIによって執筆されているとのことです(2025年10月時点)。

活用成功の鍵「AIは80点、残り20点を人が磨く」

AIを活用する上でのベストプラクティスは、「AIに100点を求めない」ことです。AIが担当するのは、構成案やドラフト作成といった「80点」までの工程です 。

残りの「20点」は、自社独自のこだわり、言い回し、そして何より重要な「ファクトチェック」と言った、必ず人間の手で行わなければいけない部分です。メディアや記者にとって、情報の「信頼性」は最も重要です。AI任せの誤った情報が世に出た際、責任を問われるのは広報担当者だけでなく、その情報を信じて掲載したメディア側にもあるのです。記者・メディアの管理体制が問われる事態にもなってしまうので、記者に嫌われる「AIっぽさ」を排除したり、自社らしい魂を吹き込んだりと言った作業こそが、これからの広報に求められる「質」の仕事となるのです。

「AI検索時代」への対策(AIO)

AIの活用は「書く」側だけではありません。「読む」側、つまり記者や生活者の行動も変化しています。朝日新聞社や日本テレビ(ZIP!)などでは、すでにAIを活用したリリース検索やネタ探しが始まっています。そこで重要になるのが、以下の4つの対策です 。

  • LLMO(大規模言語モデル最適化):「学習拒否」「掲載されやすい媒体」の把握とアプローチ
  • GEO(生成エンジン最適化):自サイトに網羅的な情報がある、信頼ある有名サイトに載る
  • AEO(回答エンジン最適化):自サイトの構造化(FAQ、Hタグ)、2MB以下が理想
  • AIO(AI最適化):上記全般に取り組むこと

“AIに読まれるリリース”を作るためには、プレスリリースとわかるような表記を入れたり、タイトルにカテゴリを明記したり、構造を整理したり、数値やデータを入れたりすることが必須となります。人の手でももちろん可能ですが、ここでもAIの力を借りるのが効果的と言えるでしょう。

まとめ

今回のウェビナーでは、リリース作成における生成AIの活用事例から、成功の鍵、そしてAI検索について見てきました。生成AIの普及によって負担が軽減される場面は今後も増えていくかもしれません。それでも、記者とのリレーション構築や、より高度な広報戦略立案、そしてAIにはできない「人間らしい部分」の重要性はますます高まっていくことでしょう。

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