食品ロス報道から見えた「社会の話題に参加する広報」
1年間のバズ記事から読み解く、ニュースづくりのヒント

2025年10月、食品ロスに関する記事がSNSで大きな注目を集めました。なかでも、ある企業の一つの取り組みを紹介した6記事が、同月の関連ニュースの合計バズ数の約8割を占めていたのです。
その企業とは、ファミリーマート。値下げ商品に貼る「涙目シール」をフリー素材として公開したことが話題になりました。
10月は、国が定める「食品ロス削減月間」。実は、食品ロスに関するニュースの背景を探ると、企業独自の取り組みだけでなく、政府や自治体の施策、季節行事など、さまざまな社会の動きが見えてきます。
こうした社会的な話題を、企業の広報活動にどう活かせるのでしょうか。
今回は、PRオートメーションの「Buzz NEWS Analyzer(以下、BNA)」を使い、2025年10月から2026年9月までの食品ロス関連記事を分析。SNSで注目を集めたニュースと、その背景から、広報企画づくりのヒントを探ります!
▼今回の分析に使用した「Buzz NEWS Analyzer(BNA)」とは?
BNAは、国内主要Webメディアの記事とSNSでのシェア状況を分析する、PRオートメーションのメディア分析ツールです。「どのような話題が」「いつ」「どのメディアで」「どれほど注目されたのか」をデータから読み解くことができます。
データで見る「食品ロス」報道の盛り上がり
農林水産省が2026年6月に公表した推計によると、2024年度の国内食品ロス量は461万トン。前年度から3万トン減少した一方、事業系食品ロスは237万トンと、前年度から6万トン増加しています。
企業にとっても、引き続き重要な課題である食品ロス。では、メディアではどのような動きがあったのでしょうか。
BNAで取得した食品ロス関連記事を分析したところ、2025年10月から2026年9月までの1年間で、SNS上で1バズ以上を記録した関連記事は621件、合計バズ数は10,222でした。

特に注目したいのは、次の4か月です。

2025年10月は、記事数・合計バズ数ともに年間最多。1月、2月にも大きな反応が見られました。
一方、2026年6月は76件と記事数が多いものの、合計バズ数は395。記事の掲載件数とSNSでの拡散規模は、必ずしも比例しないことがわかります。
さらに詳しく見ていくと、バズ数が大きく伸びた月には、特定のニュースに反応が集中していました。
では、実際にどのような話題が注目されたのでしょうか。
話題になったニュースをピックアップ
1.ファミリーマート:自社の取り組みを、社会全体で使えるものに
2025年10月22日、ファミリーマートは、値下げ商品に使用する「涙目シール」のイラストをフリー素材として公開しました。
「たすけてください」というメッセージを通じて、値下げ商品の購入を食品ロス削減への参加につなげる取り組みです。
このニュースは複数の媒体で報道され、BNAでは関連6記事で合計2,735バズを記録。2025年10月の合計バズ数の約78%を占めていました。
なかでも、livedoor NEWSの記事は2,038バズ、ハフポストの記事は479バズを記録しています。
【注目ポイント】企業の枠を超えて、取り組みへの参加機会を広げたこと
「涙目シール」は、すでに食品ロス削減の取り組みとして展開されていました。今回新しかったのは、誰もが利用できるフリー素材として公開し、他の小売店や飲食店などにも活用の機会を広げたことです。
自社の取り組みを発表するだけでなく、社会全体で活用できるものへと発展させた点に、ニュースとしての特徴がありそうです。
2.Too Good To Go:食品ロス削減を「お得な買い物」に
2026年1月28日、デンマーク発の食品ロス削減アプリ「Too Good To Go」が日本でサービスを開始しました。
まだ食べられる余剰食品を、消費者がお得に購入できる仕組みで、クリスピー・クリーム・ドーナツやファミリーマート、NewDaysなどが参加しています。
BNAでは、1月28日から31日までの関連7記事で合計928バズを記録。1月全体の合計バズ数の約81%に相当します。
ORICON NEWSの記事は561バズ、Impress Watchの記事は341バズを獲得しました。
【注目ポイント】社会課題を、生活者にとっての身近なメリットに変えたこと
食品ロス削減という社会的意義に加えて、「人気店の商品をお得に購入できる」という具体的なメリットがある点が特徴です。
環境問題に関心のある人だけでなく、日常の買い物を楽しみたい人にも接点を生み出す仕組みが、ニュースとして伝えられています。
3.恵方巻:季節行事が社会課題をニュースにする
2026年2月1日には、恵方巻の食品ロスが約16億円にのぼるという試算を取り上げたニュースが954バズを記録しました。
また、恵方巻の経済効果と食品ロスを対比した報道にも157バズが集まっています。
【注目ポイント】季節行事が、社会課題を身近に考えるきっかけになったこと
食品ロスは年間を通じた課題ですが、節分という多くの人にとって身近な行事と結びつくことで、問題を具体的に捉えやすくなります。
ただし、これらは企業のポジティブな取り組みではなく、廃棄問題を指摘する報道です。社会的な関心が高まることは、企業にとって発信の機会になる一方、対応を問われる場面にもなり得ることがうかがえます。
ニュースの背景にある、政府・自治体の動き
ここまで紹介したニュースには、企業の独自施策や生活者の関心、季節行事など、それぞれ異なる特徴がありました。
一方、こうした食品ロスの話題を考えるうえで、見逃せないのが政府・自治体による継続的な取り組みです。
例えば、2025年10月には消費者庁、農林水産省、環境省が連携し、食品ロス削減月間の啓発イベントなどを実施。東京都も、都内1,054店舗の飲食店などと協働した「江戸のこころで 食品ロスゼロ!キャンペーン」を発表しました。
12月から翌1月には、国と地方自治体などが連携した「おいしい食べきり」全国共同キャンペーンが展開されました。
さらに、2月の節分に向けては、農林水産省が食品小売事業者に対し、恵方巻の予約販売や需要予測の工夫など、食品ロス削減への取り組みを呼びかけています。
このように、行政による啓発や季節行事を通じて、食品ロスが社会的な話題となる機会は年間を通じて存在しています。
こうした現象を考えるうえで参考になるのが、広報研究にも関連する「アジェンダ・ビルディング」という考え方です。
これは、メディアが何を重要な話題として取り上げるかが、行政や企業などの情報源、メディア自身の判断、社会で起きる出来事など、複数の要因によって形づくられるというものです。
今回のデータだけで、政府・自治体の施策がSNS上の反応を直接生んだとは断定できません。しかし、企業の広報活動を考えるうえでは、自社だけで話題を生み出すのではなく、社会でどのような関心が形成されているのかを把握することも重要だと考えられます。
広報に活かすヒント:社会の話題に、どう参加するか?
今回の分析から見えてきたのは、社会的な関心が高まるタイミングが存在する一方、実際にSNSで大きな反応を集めたのは、それぞれ異なる特徴を持つニュースだったということです。
企業が発信したいタイミングと、社会がその情報を必要とするタイミングは、必ずしも同じではありません。
だからこそ広報には、社会の関心がいつ、どこに向かうのかを捉え、そのタイミングに自社ならではの新しい事実や価値を重ねる視点が求められます。
では、「いつ発信するか」と「何を発信するか」をどのように考えればよいのでしょうか。今回の分析を踏まえ、広報担当者が実践できる3つのアクションをご紹介します。
① 自社の広報カレンダーに「社会の予定」を重ねる
まず取り組みたいのは、行政の施策や制度変更、統計の公表予定、啓発月間、季節行事などを把握し、自社の発信計画と照らし合わせることです。
例えば食品ロスなら、10月の削減月間、年末年始の食べきりキャンペーン、2月の節分などが挙げられます。
過去の報道データも確認すれば、どの時期にどのようなニュースが注目されたのかを把握し、企画を検討する材料にできます。
まずは、自社に関連する社会的な出来事を3つ選び、広報カレンダーに書き込むことから始めてみましょう。
② 社会の話題に加えられる「自社ならではの新しい事実」を探す
社会的な関心が高まるタイミングを見つけても、発信する中身がなければニュースにはなりません。
自社の取り組みについて、「以前と比べて何が変わったのか」「誰にどんなメリットが生まれるのか」「どのような成果が出ているのか」を、改めて整理してみましょう。
新しい事実が見つからない場合には、関係部署と連携し、新たな取り組みや成果の可視化を企画することも選択肢になります。
自社の発表予定について、「いま社会に伝えるべき新しい事実は何か」を一文で説明できるか、確認してみてください。
③ 過去の報道から、メディアが関心を持つ切り口を探す
最後に重要なのが、同じテーマについてメディアが過去にどのような報道をしてきたのかを調べることです。
例えば、生活情報系メディアでは消費者にとってのメリット、ビジネス系メディアでは新しい仕組みや事業としての可能性、地域メディアでは地域課題との関係など、媒体ごとに異なる切り口が考えられます。
自社の発表に近いテーマの記事を3本選び、見出し、ニュースの切り口、取材対象を比較してみましょう。
「自社が何を伝えたいか」だけでなく、「その媒体の読者が、なぜ今その情報を知る必要があるのか」を考えることが、メディアアプローチの精度を高める第一歩となるでしょう。
まとめ:社会の話題を知ることが、広報企画の出発点になる
今回の食品ロス報道の分析では、政府・自治体の施策や季節行事が年間を通じて展開される一方、SNSでの大きな反応は、特定の企業施策やニュースに集中していました。
広報活動では、必ずしも自社だけで新しい話題を生み出す必要はありません。
すでに社会で関心が集まっているテーマを捉え、そこに自社ならではの事実や取り組みを加えることも、重要なアプローチです。
社会の話題を知ること。そして、その話題に自社がどのような価値を加えられるかを考えること。
10月の食品ロス削減月間をきっかけに、自社の取り組みを世の中の話題と結びつける視点で見直してみてはいかがでしょうか。
▼PRトレンドナビとは?
本コラムは、自社ツール「PRオートメーション」内の「企画する(Buzz NEWS Analyzer)」機能を活用し、話題のキーワードを分析した結果をもとに構成しています。
いま注目されている社会的テーマやキーワードを広報視点で読み解くシリーズであり、生活者の価値観の変化や季節性・時事性のある話題をもとに、企業広報にどう活かせるかを事例やデータとともにご紹介します。日々の企画立案や社内提案のヒントとして、ぜひご活用ください。
▼分析レポートご希望の方へ
『PRトレンドナビ』のように、御社の商品・テーマに応じたバズ傾向の分析レポートもご提供可能です。分析レポート作成をご希望の方は、お気軽にお問い合わせください。

