広報活動の成果を正しく測定するために適切な効果指標を設定し、それらを適切に読み解く。これも広報担当者にとって重要なスキルです。
プラップノードでは、「広報効果測定研究会」と銘打ち、広報のKPIとその測定について解説するオンラインセミナーを定期的に行っています。本記事は第2回の内容を再編集しまとめたものです。
※この記事は下記のウェビナーを再編集したものです。ウェビナーの内容は当社の見解を含みます。
広報効果測定研究会〜 第2回テーマ「効果指標の読み解き方を考える」〜
セミナーの投影資料はこちらよりダウンロードしていただけます。
セミナー登壇者
桃井 克典(もものい かつのり)
プラップノード株式会社 コンテンツマネージャー
2013年プラップジャパン入社。PRコンサルタントとして、BtoC・BtoB問わず様々な企業・自治体の広報業務に従事。リリース配信、メディアアプローチにとどまらず、イベント、SNS、動画、Webサイトなど様々な手法を通じた戦略立案・実行を担当。2020年よりPRオートメーションのマーケティング担当として、Webサイト、ウェビナー等で広報活動効率化のヒントを発信している。
広報の目的と効果指標の関係
第1回のセミナーでは、「広報の目的によって図るべき指標は違う」という前提のもと、
”広報の目的”として考えられるものと、それに対応する効果指標やKPIを紹介しました。第1回の内容はこちらの記事でも紹介しているのであわせてご覧ください。
効果指標の例と、それぞれの読み解き方
第2回である今回のセミナーでは、ポピュラーな下記の効果指標の例を9個あげ、それぞれを採用した際のメリット・デメリット、運用の方法と結果から何を導き出しどう報告すべきか、に焦点を当てて紹介しました。
- 広告換算額
- 掲載数
- リーチ数
- 重要媒体掲載数
- 認知度
- 競合比較
- バズ数
- 売上・問合せの相関
- HP流入数
この記事では、「昔ながらのオーソドックスな効果指標」「重要度が増している高い効果指標」「広報強化につながる効果指標」の3つのカテゴリに分けてそれぞれ解説します。
昔ながらのオーソドックスな効果指標
広告換算額
露出記事の面積や番組の掲載秒数を、広告出稿した場合の値段に換算したものが広告換算額です。
広報では長いあいだ広告換算額が効果指標に使われてきたという背景もあり、誰でも理解しやすいというメリットがあります。反面、広告換算額はPR会社やリリース配信サービスによって異なり、統一性がありません。依頼した先によって異なる数字が出てくるため、実態を測りにくいという点も把握しておく必要があります。
上記を踏まえて、換算額を指標に置く際は、分析に時間をかけずに一覧でまとめておく程度で運用していくのがおすすめです。
リーチ数
露出媒体を見るであろう人数の推測値であるリーチ数は、露出記事への期待感が増えたり、媒体の重要度の指標になったりするメリットがあります。しかし広告換算額と同様、実際に見られた数とは乖離があるため、実態を測るには不向きというデメリットがあることも念頭に置いておきましょう。
リーチ数を指標に置く際は、自社情報を届けたいターゲットを読者に含むメディア掲載に注目し、SNSでの波及を追うなどすると効果的です。
掲載数
クリッピングサービスやWeb検索を使って記事や番組の掲載・露出数をカウントし、指標に活用している広報部も多いと思います。運用しやすく直感的で納得感がある一方、広告換算と同様に記事の質を評価できないデメリットがあります。
掲載数を指標に据えるなら、デイリーの数を比較するのがおすすめです。転載の数はリリースごとにさほど差はないので、差分を測ることで転載以外の編集記事が多い・少ないを見ることができます。
ポイントは編集記事の掲載数を追うことです。掲載記事を獲得したリリースのどこが良かったのかを分析して報告します。
重要度が増している効果指標
重要媒体掲載数
自社にとっての「重要媒体」をあらかじめ設定し、その媒体にどれだけ載ったかを指標にする方法です。「露出しても効果が薄い」と感じている媒体を排除し、意味のある露出のみ数値化するので、全掲載を収集するより工数がかかりません。重要媒体の選定設定が手間ですが、認知度・影響度の高いメディアを選ぶことで社内の注目度も高まります。
重要媒体を効果指標にする際の注意事項は、仕分けと運用を煩雑にしないために対象媒体を絞ること。読み解く際は①露出一覧を作成し、②目視で論調分析、③再現性もしくは改善の余地があるポイントを整理することで次月以降の活動に生かせます。
認知度
認知度調査や調査による順位を指標にするのも一般的かと思います。この指標は多くの社員にとっても関心の高い項目で、広報活動の社内認知を促進する効果が期待できます。
ただし、経営層や事業部の社員の活動、広告施策など「広報活動が成功したから認知度があがった」と言い切れないところが注意点です。
定期的に調査を行い、その間に何をしたかを振り返るのが読み解くポイントです。
競合比較
競合他社の露出数もあわせて集計し、割合や記事一覧を見える化するのが競合分析です。相対的に評価でき、チーム外にも伝わりやすく、他社の攻勢を把握できるメリットがありますが、人力では手間がかかり、自動化するとコストがかかります。
競合の露出数が可視化されることで、獲得すべき露出数の妥当性が明らかになります。また「競合であるA社より露出が○○件多かった」など、広報部門以外に報告する際にも成果が伝わりやすいというメリットがあります。
競合分析は毎月詳細に行うと作業負担が倍増します。各社の強み・弱み、露出に対する論調などの詳細分析は一年~半期に一回程度とし、毎月のタスクとしては分析<共有くらいの温度感で運用することをおすすめします。
広報強化につながる効果指標
バズ数
記事のSNSシェアボタンが押された数のことを当社ではバズ数と呼んでいます。有料ツールが必要になりますが、広告換算等とは違い、実際に記事を読んでアクションを起こした人の数がわかるという点でおすすめしたい指標です。
バズ数を効果指標に据える場合、日付や見出し、メディア名、バズ数を一覧にまとめ、バズの多かった記事から再現できそうな要素を抜き出したり、「このメディアの記事はよくバズる」というような媒体をピックアップして重要媒体に設定するなどして運用するのがおすすめです。
バス数の効果測定についてはこちらの記事でも詳細を解説しています。あわせてご覧ください。
売上・問合せの相関
売上・問合せデータの動きとパブリシティ露出の関係を計測するのが売上・問合せの相関です。大きな露出でないと測定しにくく、マーケティングや広告などの施策と時期が重なった際は広報の成果と断言できないなどのデメリットはあるものの、PR活動が売上と相関しているか検討できるため貢献性の高い指標です。
読み解く際は、売上げや問合せのデータをデイリーで可視化し、急激に増加している箇所の広報活動を振り返るといった読み方ができます。相関が高そうな媒体は重要媒体に設定し、次の施策に生かせるよう整理しましょう。
HP流入数
ホームページやオウンドメディアへの誘導数を広報評価に利用し効果指標に加える方法です。Web以外の正確な数値は測れないため事業内容や活動内容によっては合わない場合もあります。しかしこういったデータによる指標は視認性が高く、貢献度が示しやすいというメリットもあります。
運用する際はGoogleアナリティクスなどのアクセス解析ツールを使い、流入元を確認します。どのメディアからどれくらい流入があったか測ることで、記事を読んだユーザーを自社に呼び込めたことが可視化されます。まとまった数値が出せれば広報の効果を社内に示しやすい指標です。
次の活動につなげられるか否かがポイント
さまざまな指標を紹介しましたが、効果指標を考える上で最も重要なのはデータを集めることではなく、集めたデータを読み解き、さらに次の活動にどうつなげられるのか?という考察です。広報行動を可視化し、結果を分析することで、活動の改善点のヒントを数字から見つけ出すことができます。形骸化しがちな効果測定を意義のあるものにするために、「次月の活動に生かす」をいう視点を意識して指標を捉えてみてください。
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