11月26日、株式会社宣伝会議より当社の渡辺による初の書籍『なぜ御社の広報活動は成果が見えないのか? 可視化・数値化・省力化を加速するDXの進め方』が発売されました。本記事では、長年PRの現場で広報担当者の業務効率化とDX化を推進してきた渡辺に、書籍に込めた思いを聞きました。
渡辺 幸光(わたなべ ゆきみつ)
プラップノード株式会社 CEO
1971年生まれ、米国イリノイ大学シカゴ校卒業。デジタル系の制作会社、外資系PR代理店、広告代理店などを経て、2014年プラップジャパン入社。デジタル戦略の策定・実行に注力。2020年3月からプラップノードCEOとして、国内初の総合PR-SaaSツール「PRオートメーション」の運営・企画開発・管理を行っている。
広報業界が抱える「見えない成果」の壁
編集部:
『なぜ御社の広報活動は成果が見えないのか? 可視化・数値化・省力化を加速するDXの進め方』が発売になりました。今回、書籍を出版しようと考えた理由は何だったんですか?
渡辺:
一番の理由は、広報・PR業界の将来に対する危機感です。広報の効果測定が不透明なままでは、業界自体が縮小していくのではないか?という思いがありました。
また、このような課題の解決のため、私たちは現在、実際にデジタル技術を活用した効果測定の仕組みを構築し、運用しています。
その知見を広く共有することで、業界全体の発展に貢献することが、今私たちに求められている役割なのではないか…そういう思いもあって、出版を決めました。
編集部:
「広報の効果測定が不透明なままでは業界自体が縮小していく」というのは、具体的にはどういうことなのでしょうか?
渡辺:
たとえば、デジタルの広告換算やリーチ数などの指標が、実態とかけ離れた数字になっているケースが少なくないということは、広報・PR関係者の間でもよく取り沙汰されることかと思います。各メディアのリーチ数を単純に合算すると日本の人口を超えてしまう、といったような、明らかに非現実的な数字が報告されている話も珍しくありません。
編集部:
効果の実態を測れないということですね。
渡辺:
そうです。広報の本質は企業の社会的影響力を高めることですが、現状の指標ではその本質的な価値を適切に示すことができていません。特にデジタルメディアの影響力を測定する際、従来の手法では限界があると感じています。
マーケティングの視点を広報に取り入れる
編集部:
そのような課題に対して、どのようなアプローチを考えられたのでしょうか?
渡辺:
私たちが注目したのは、デジタルマーケティングの世界で当たり前になっている「データに基づく効果測定」を広報・PRの世界に持ち込むことです。
最もシンプルな例ですと、プレスリリースの既読率を正確に測定するような仕組みを考えました。マーケティングの世界では既に確立された技術ですが、これを広報の文脈で適切に活用することで、多くの課題を解決できます。
既にデジタルの分野で一歩先をいっているマーケティングや広告と同じ手法を用い、比較して、その上で「やっぱり、広報・PRには価値がある」と認められることが重要だと私は考えているんです。そういう点でも、デジタル化は広報・PRパーソンが避けて通れない道だと思います。
編集部:
そのような考えの背景には、ご自身のキャリアや経験も関係しているのでしょうか?
渡辺:
関係していると思います。
私は元々、地方自治体のWebサイト制作からキャリアをスタートし、その後PR業界に入り、さらに外資系広告代理店でデジタルマーケティングを経験しました。そして再びPR業界に戻ってきた時、広告の世界と比較して、PR業界が変化していないことに衝撃を受けました。デジタルの世界では当たり前になっていた効果測定の手法が、広報・PR業界ではほとんど導入されていなかったんです。
広告やマーケティング業界ではさまざまなツールで直近のデータを得られ、次の施策に活かしている一方で、広報・PR業界では効果測定の結果を見るのに数日のタイムラグが発生する。その結果も、自動ではなく人が手を動かして集計を行っている。この差は、業界の将来を考える上で非常に重要な示唆を与えてくれました。
編集部:
そのような課題に対して、書籍ではどのような解決策を提示されていますか?
渡辺:
まず前提として、この30年でメディアでのデジタル化がどのように進展したのか、広報を取り巻く環境の変化について解説しています。その上で、そうした外界の変化に対して広報が一歩出遅れてしまった、その要因についても分析しています。
さらに、こうした状況に対する解決策として「広報欲求5段階説」「広報資産」といった概念、そして広報にとって必要不可欠と言える「KPIツリー」と「KPI」の作り方を詳細に紹介しました。
実は当社にも、KPI設定に関するご相談はよく寄せられるんです。広報のKPIについて考えるとき、その進捗過程を示すKPIツリーという概念が前提にあると、目標が形骸化せず次の手、次の手と前に進んでいくことができます。
広報の未来を切り開くために必要なこと
編集部:
このような取り組みを実践することで、広報はどのように変わっていくとお考えですか?
渡辺:
広報・PRの本質は、企業の社会的な影響力を高めることです。しかし、その効果が適切に測定できなければ、単なるコストセンターとして見られかねません。データに基づく「可視化・数値化・省力化」が普及することで、PRの価値がより明確になり、戦略的な投資として認識されるようになると考えています。
特に重要なのは、これが企業とメディア双方にとって価値のある変革となる点です。企業にとっては投資対効果が明確になり、メディアにとっては質の高い情報提供を受けられるようになります。この好循環を作り出すことが、業界の持続的な成長につながると確信しています。
編集部:
最後に、この本を読む方々へのメッセージをお願いします。
渡辺:
広報・PR業界は、デジタル化の波に乗り遅れているように見えますが、それは大きなチャンスでもあります。マーケティングの世界で確立された技術や手法を、広報の文脈で活用することで、新しい可能性が開けてきます。
重要なのは、変革を恐れないことです。データに基づく効果測定は、広報の価値を否定するものではなく、むしろその真価を適切に示すための手段です。この本が、広報・PR業界の健全な成長と、より効果的な広報活動の実現に向けた一助となれば幸いです。
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