
当社が昨年度実施したアンケート調査によると、広報部門における生成AI導入は4割近くに達し、前年比で増加傾向にあることが明らかになりました。この記事では、2024年の生成AI活用の動向を振り返りと、2025年はどのようなAIがメジャーになっていくのか、トレンドを探っていきます。
※本記事は2025年1月上旬に開催したウェビナー「広報×生成AIの2024年総まとめ&2025年注目トレンド」の内容を再編集したものです。内容は開催当時の情報になります。また、弊社独自の見解が含まれるため、他社と見解が分かれる可能性があります。
登壇者

野中 透(のなか とおる)
プラップノード株式会社 顧客開発部 部長
精密機器メーカー、デジタルエージェンシーを経て、2018年プラップジャパン入社。デジタル広告運用、SNS運用、ソーシャルリスニング、アクセス解析など広報領域におけるデジタル施策全般のディレクションを担当。 これまでに食品メーカー、飲料メーカー、外資系IT企業、大手デベロッパー、製薬企業など幅広い業界のデジタル施策を手掛ける。 2022年より、PRオートメーションのマーケティング担当として、デジタル領域を中心とした施策立案、実行に携わる。

桃井 克典(もものい かつのり)
プラップノード株式会社 コンテンツマネージャー
2013年プラップジャパン入社。PRコンサルタントとして、BtoC・BtoB問わず様々な企業・自治体の広報業務に従事。リリース配信、メディアアプローチにとどまらず、イベント、SNS、動画、Webサイトなど様々な手法を通じた戦略立案・実行を担当。2020年よりPRオートメーションのマーケティング担当として、Webサイト、ウェビナー等で広報活動効率化のヒントを発信している。
広がりを見せる生成AIの活用シーン
前述の通り、生成AIを取り入れている企業広報部門は4割近くになろうとしています。一方で、企業のマーケティング部門や営業部では6~7割がAI活用しているという報道からもわかるように、広報部門において殊更急進的に導入が進んでいるとは言えないのが現状のようです。
広報で生成AIの導入が進まない要因として、次の二つがあげられると当社は考えています。
①広報業務特有のプロンプトを知る必要がある
②広報業務が多岐に渡るため、生成AIと相性のいい作業が不明瞭
①広報業務特有のプロンプトを知る必要がある
生成AIをより効果的に活用するため、プロンプト(指示文)の質が重要視されています。「具体的に」「構造的に」「役割を与える」という手法が主流でしたが、広報業務に関しては、これに加えて「学習させる」というテクニックが必要です。
自社における過去の成功事例や、他社の取り組みをあらかじめ生成AIに学習させることで、より再現性の高いアイデアを引き出すことができます。
セミナー内では「入社式」の企画立案を例に、プロンプトの違いによる出力の差を案内しました。

過去事例を学習させなかった場合、「宇宙で入社式」「時空旅行」など再現できない突飛な出力だったのに対し、学習させた場合は「競合会社合同の入社式」「VRを活用した入社式」「アドリブで行う入社式」など、そのまま使うことはできないものの企画のベースになりそうな出力が見られました。
広報担当者がプロンプトを考える際は、以下の型を参考にしてみてください。

②広報業務が多岐に渡るため、生成AIと相性のいい作業が不明瞭
次に、②の広報業務が多岐に渡るため、生成AIと相性のいい作業が不明瞭という問題。すなわち、広報業務のどれを生成AIに任せればいいのかわからないというものです。
こちらについては、具体的な活用シーンとプロンプトをセットにしたものをこちらのページで公開しています。
「この作業、生成AIを使うと早い!のタイミングがわからない」という方は、ぜひ一度目を通してください。
2024年総括|広報業務で活用できる主要生成AIツール
生成AIのサービスはどんどん増加していますが、広報業務において特に使い勝手のいいものをいくつか紹介します。
大きく分けると、文章作成に特化したA生成Iと、画像・動画・音声などのマルチメディア系の生成AIに分類されます。
文章生成に強い主要な生成AI
文章作成系の代表格であるChatGPTは、生成AIブームの火付け役として、プロンプト不要のGPTsなど使いやすい機能を搭載している点が魅力です。一方、Googleが開発したGemini(旧Bard)は最近、日本語力が急速に向上しており、より自然な日本語での出力ができるようになってきました。
また、MicrosoftのCopilotは、ExcelやWord、PowerPointとの連携が可能で、企業のドキュメント作成業務との親和性が高いのが特徴です。
Anthropic社のClaudeは、図表やグラフの生成が可能で、日本語の自然さでも高い評価を得ています。
Perplexityは、ソフトバンクユーザーなら1年間無料で利用できます。出典元も出力されるので、情報の信頼性が重視される広報業務との相性が良いと考えられます。
また、X社(旧Twitter)が開発したGrokは、SNSの投稿引用や分析が得意で、ソーシャルメディア運用との連携において期待値が高いAIになります。

マルチメディアコンテンツ制作を支援する生成AI
画像生成においては、IdeogramやImageFXが注目を集めています。特にIdeogramはリアルな画像生成が可能で、社内資料やSNS投稿のビジュアル制作での活用に期待が持てるものです。
動画生成の分野では、HailuoAIとRunwayがおすすめです。HailuoAIは写真から自然な動きのある動画を生成できる点が特徴的です。
音声分野ではCoeFontや音読さん、音楽分野ではSunoやMusicFXなど、目的に応じた選択肢が用意されています。
資料作成においては、Gammaやイルシルといったツールが、企画書作成などで活用されています。また、図表作成に特化したNapkinやClaudeは、プレゼンテーション資料の品質向上に一役買ってくれそうです。

2025年、AIエージェント元年の到来
セミナーでは未来の話にも触れられました。2025年の最大のトレンドとして注目されているのが「AIエージェント」の本格普及です。
AIエージェントは、現状の「指示待ち」型の生成AIとは異なり、自律的に行動し、目標達成に向けて計画を立て実行する能力を持っています。中にはPC操作までAIが自動で行うというものまで出てきています。

前述したGoogle、Anthropic、OpenAIといった主要な生成AI開発企業が、それぞれ特徴的なAIエージェントの開発を進めています。
たとえば、GoogleのAgentSpaceは社内情報の検索や業務の自動化、情報整理の支援などを特徴としており、企業の業務効率化に大きく貢献することが期待されています。広報担当者だけではなく、すべてのビジネスパーソンにとってAIエージェントの動向は無視できないものとなりそうです。

情報の流通構造にも変化が訪れる?
AIエージェントの台頭により、従来のメディアの情報流通構造にも変化がもたらされるかもしれません。
これまでは生活者がメディアのサイトにアクセスし、情報を得ていましたが、今後はAIエージェントによって情報を収集・整理・要約して提供するケースが一般化する、という未来も考えます。
もし本当にこのような変化が起こった場合、広報担当者の業務も大きく変わる可能性があります。たとえば、AIエージェントを介した情報発信の最適化や、より効果的なメッセージ戦略の構築が求められるようになるでしょう。
生成AIと人間の協働の時代へ
2024年の総括と2025年のトレンド予測から見えてくるのは、生成AIやAIエージェントが広く社会に浸透することによって、私たちの仕事のポイントが少しずつ変わってくるかもしれないということです。
生成AIを「人間の代替」ではなく「協働のパートナー」として進化させていくためにも、一人ひとりが生成AIに対して知識を持っていくことが必要になると思われます。
当社では今後も広報×AIに特化したセミナーを開催していく予定です。皆さまの情報のアップデートにぜひご活用ください。
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