
メーカー
1,000名以上
広報成果の定量化

メーカー
1,000名以上
広報成果の定量化
哺乳びんやベビーカーなどの育児用品メーカーとして、65年以上の歴史を持つコンビ株式会社。同社では、社内外広報を一手に担う“ひとり広報体制”で日々の情報発信を行っています。これまで「リリース配信数」など行動ベースの目標が中心だった広報活動を、新体制をきっかけに定量指標を軸にした“会社の売上目標と連動するPR”へと変革。「PRオートメーション」を導入して5年目となる現在、その実現をめざすための活用について、広報担当の青山さんにお話を伺いました。
Q. 青山さんのご担当領域を教えてください。
青山さん:
社外広報では製品やサービス、人事関連のリリース配信を担当しています。社内広報では社内報の作成を行っており、加えて経営企画室内で会議運営や事務局のサポートもしています。
Q.一人でこれだけ幅広い領域を担当されているんですね。広報全体のミッションはどのように定義されていますか?
青山さん:
広報活動に対しては会社の売上目標に対してどれくらい貢献できるかという定量的な目標が設定されています。
Q.「売上目標連動のKPI」があるのは珍しい印象です。以前からそうだったのでしょうか?
青山さん:
以前はリリース配信数や露出件数といった“行動すれば取れる数字”が中心でした。達成はしやすい一方で、「どの露出が会社の成長に本当に寄与しているのか?」というモヤモヤが残っていたんです。「露出数=成果」ではないと感じていて、例えばターゲット外のメディアに多く取り上げられても、実際の顧客層との接点にはつながりにくい。行動量だけを追うことに疑問を持っていました。
ちょうど組織体制の変更があった際に新上司と相談のうえ、PRオートメーションで見れる指標をKPIに導入しました。広告換算額など前年より何%伸ばすかを目標に設定し、会社の売上目標と連動させています。また既読率、PDFダウンロード数も見ていて「行動ではなく結果」を追うPR活動にシフトできました。
Q.納得感の高い目標設計ですね。なにか意識の変化はありましたか?
青山さん:
広報担当になる前は管理部門で6年程勤めていたため、自分自身の日々の業務活動を定量的に「どれだけ会社に貢献できたか」を見える化できたのは大きな変化です。

Q.PRオートメーションをどのように日々の業務のなかで活用されていますか?
青山さん:
朝のメールチェックと同じ感覚で、毎日立ち上げています。特にクリッピング機能は欠かせません。露出結果は、マーケティングチームとも共有しています。
あと取材カードですね。取材の経緯や、やり取りメールを貼って記録しています。現在はひとり広報の体制ですので、私が異動しても次の担当者がスムーズに引き継げるよう、記録を残すようにしています。
Q.他に重宝している機能はありますか?
青山さん:
メディアリストの「タグ」の機能が好きです。記者さんごとに「トレンド」「便利グッズ」などのタグを細かくつけておくと、リリース配信時に適切な人へ確実に届けられるという安心感があります。
Q. 記者との関係構築で意識していることはありますか?
青山さん:
やはり、ユーザー視点の話題が盛り上がりやすいです。実際に子育て経験のある記者の方とは、製品を通じて深い共感を得られることもあります。ただ、そうでない方にも伝わるように、言葉や文脈を工夫することがこれからのテーマですね。
Q設定された定量目標の達成に向け、分析機能はどのように活用されていますか?
青山さん:
リリースを出した翌日・1週間後・1か月後の3回、関係部門に必ずレポートを展開しています。リリース結果を数字で見ることで、社内にも「リリースを出す意味」を伝えることができています。“数字で成果を示す”ことで、広報活動への理解が増したと感じます。
Q.リリース企画の際、競合分析の機能も使われていると伺いました。
青山さん:
毎月、競合他社がどの媒体で、どんなテーマで露出しているのかを見ながら、メディアアプローチやテーマ設定のヒントを得ています。マーケティングチームとも結果を共有し、取り組みをブラッシュアップしています。

Q.今後、広報として注力したいテーマは何でしょうか?
青山さん:
今後も、より製品に関する話題へ注力していきたいと考えています。老舗ベビー用品メーカーとして認知はいただいていますが、子育て層は目まぐるしく世代交代していくため、常に新しいママ・パパと接点を築く必要があります。
Q.製品中心にすることで、どんな価値を伝えたいですか?
青山さん:
機能面だけでなく、アフターサポートの充実性や開発段階の努力など、製品の裏側にあるストーリーをもっと届けたいです。単なる「新商品告知」では見えない価値を伝えていきたいですね。ベビーカーひとつ取っても、見た目だけでは分からないこだわりや伝えるべきポイントがたくさんある。その思いを自信を持って正しく伝えること自体がモチベーションになっています。
Q. 最近では「調査PR」にも取り組みを始められたとか。
青山さん:
はい。もともと社内で製品開発の説得材料として実施していた市場調査を、外部発信にも活かせないかと考えています。まだ始めたばかりですが、データを“信頼を生むコミュニケーション”に変えることを目指しています。
Q. これからの広報活動の課題は何だと感じますか?
青山さん:
まだまだリリース後のアプローチが課題です。掲載されて終わりではなく、そこからどのように新しい接点や理解を生み出すかが次の挑戦ですね。安全性や軽量化は他のメーカーさんもしのぎを削っているところだと思うのですが、ユーザーでない人にも納得してもらうための伝え方や導線をもっと磨きたいと思っています。

Q. 最後に、今後挑戦したいことを教えてください。
青山さん:
新卒として入社以来、うちの商品が本当に好きで、気づけばずっと一緒に歩んできた感覚があります。業界を越えて、ものづくり企業の広報同士で成功体験を共有できる場をつくりたいです。共感し合える仲間が増えれば、広報の価値をもっと高められると思います。
素敵なお話をありがとうございました!